保育、高校、医療、鉄道から「現場の声」とどける
~ローカルビッグアクション2
「現場の声」 全道6地域から発信
道労連は3月2日、JR札幌駅南口広場で「ローカル・ビッグアクション2」を実施しました。あらゆるものやサービスが値上がりしているなかで、賃金はなかなか上がらず可処分所得(実際に使えるお金) は減少し、事実上の「賃下げ」が続いている現状を打開すべく、すべての労働者の賃金引上げを求めてたたかう「2024年春闘」のアピール行動として取り組まれました。
今年こそ、物価高騰を上回る賃金の引き上げを実現するために、様々な職種・雇用形態の人たち、職場や地域の壁を越えて仕事や生活の実態など「リアルな声」を発信し、共感を広げることで大きなパワーに転換しようと呼びかけ、札幌、函館、苫小牧、旭川、釧路、北見の全道6地域で取り組みました。札幌行動でのスピーチの一部を紹介します。
命を預かる大事な仕事 見合うだけの賃金を
札幌保育労組 玉谷 史織 さん
私の働く保育園では、0歳から就学前までの子どもが90名ほど在籍しています。職員は、用務や給食パートを含めて30名ほどです。
最低基準である0歳児3人に対して保育士1人、1歳児6人に対して保育士1人、などの基準は満たしています。でも、個別支援の必要な子、食物アレルギーのある子、障害を抱えている子など、色々な子どもたちを預かっているため、基準を満たしていも「保育士がたくさんいる」とは感じられません。
走って転ぶ、友達とぶつかるなど、身体を動かして怪我をすることはもちろん、食事中に詰まらせることがないか、アレルギーのある子に違う食材を食べさせてしまうことがないか、寝返りをうって呼吸がしづらくなることはないか、水遊びやプールでの安全など、日々子どもたちの安全を意識しています。「ひとり一人の大事な命を預かっている」という重責の中で保育しています。
勤務時間は、「子どもたちと関わる時間」なので、子どもたちの記録や成長の計画、クラスだよりや誕生日カードをつくる、クラス懇談会の準備など、勤務時間内にすべてをやり終えることは困難です。小さい子どものクラスだと、自分で「今日、こんなことをしたよ」と話せないので、日中の様子を伝えるために連絡ノートも毎日記入漏れのないようにしたり、体調や排泄の回数や状態などもチェックします。勤務時間内で終わらない仕事は、居残りして「サービス」残業するか、自宅に持ち帰って作業します。
保育の仕事に誇りを持っていますが、命を預かる大事な仕事として給料は見合ってないと感じます。求められる専門性と業務の多さ、子ども預かる重責、保護者への対応、日々精一杯向き合うなかで、心が疲れてしまい休職する職員もいます。
それでもこの仕事を続けている理由は、目の前で日々成長していく子どもたちの笑顔や、子どもたちのために一緒にがんばっている保育士の仲間がいるからです。保育士の賃金・労働条件がもう少し改善されたら、保育現場を離れずに「もう少しがんばろう」と思えるようになります。
子どもたちの成長と安全を守るためにも、保育現場で働く保育士がこれ以上減らないようにすること、そのために保育士の賃金や待遇を改善することが必要です。処遇改善を求める署名にも、ぜひご協力をお願いします。保育現場の実態を知ってもらうためにも声をあげていきます。
「あるある」に共感 選ばれる職場へ
北海道勤医労 藤野 有希 さん
わたしは40代から訪問看護で働き、10数年たちます。待機の負担が強く、賃金が安い為、「選ばれない職場」になっています。私の働くステーションで待機を持つのは皆50代です。このまま成り手がいないと事業が成り立たなくなるのではと心配しています。
昨年の6月から、訪問看護の待機に問題意識を持っている仲間が集まり、訪問看護ステーションで待機をしている看護師の声を集め発信することで、待機の電話対応の一分単位の時間外手当てが支払われる事を目標に「電話に給料でんわ オンコール、ワンゴール 電話に給料ちょうだい」チームを立ち上げました。
仕事が終わった後にZOOMで集まって夜な夜なミーティングを繰り返し開き準備してきました。要求はどうしたらかなうのか、皆が納得するまで討議しました。
スタート集会で趣旨説明し、このキャンペーンで動画と「大変さ」や「あるある」など声を集めて団体交渉で理事会に声を届けたいんだと訴え、訪問看護の仲間の思いを共有できるよう動画視聴会を企画しました。
訪問看護あるあるを見るなかで、「自分たちも忘れていた、そんな事あるよね」「同じ思いの人がいるんだ」と共感を集めることができました。もっと大変な人もいるのだと、他の事業所の事も聞き、やっぱり処遇を変えたい、本部団体交渉で発言しようと力が高まりました。団体交渉当日は、12人の当事者と支持者が発言し、訪問看護師がたくさん集まりました。
今回の経験で、同じ訪問看護の仲間とこれからも討議することができる「つながり」が得られました。回答指定日は3月13日ですが、私たちは、「同じ思いをもって、同じ問題に立ち上がる事ができる仲間なんだ」とお互いに知ることができました。そして前例のない訪問看護の待機携帯電話の問題で団体交渉を行い、思いを伝える事ができました。
訪問看護は医師の指示書に基づいて訪問し、医療.介護.福祉の(患者さん)利用者さんの生活している居宅へと訪問します。このような大雪でも車を運転し、重たい荷物を持って患者・利用者の居宅まで歩きます。
2025年問題と言われていますが、病院の在院日数の短縮等により、在宅に帰ることになる利用者さん家族、施設スタッフからの電話相談は大切な地域のナースコールです。これからも要望は増える事は確実です。
1日の待機手当てだけで訪問がなければ、電話相談だけだと5回なっても10回なってもゼロです。少しでも賃金があがり、「若い人にも選ばれる職場」にしたいです。変えるために声をあげ続けます。
職場の声に垣根なし 要求汲み上げ力に
建交労北海道鉄道本部 奈良 之雅 さん
私は、JR北海道でスタッフ社員として働いています。スタッフ社員と一般社員の違いは、寒冷地手当が出ない、ボーナスは社員の2分の1、給料は最低賃金ギリギリで毎年、最賃が上がるたびに改定されています。労働条件は社員と同じで、年間労働時間は1850時間にもなります。
私の職場は手稲にある車両基地で、運転士、私のような検修、事務、資材など300人以上が働いていて労働組合が4つ存在します。建交労の組合員は職場では私一人ですが、毎年秋から春闘にかけて、建交労独自で取り組んでいる「働くみんなの要求アンケート」は組織の違いを超えて職場・関連企業・地域で展開し、要求を汲み上げています。
今年のアンケートでは、実に96%の人が生活実感で苦しい・やや苦しいと答え、賃上げでは60%の人が5万円の賃上げを要求しています。このアンケートの結果をもとに、建交労北海道鉄道本部は2月14日、賃金・処遇改善・お客様の安全とサービス関係・職場要求など計57項目を会社側に申入れました。
会社側も、毎年職場から上がって来る要求を無視することが出来なくなり、設備要求で目に見える前進もありました。職場で困っていることに組織の違いは関係ありません。粘り強く対話を重ね、信頼関係を築いてきた結果だと思います。
あらゆるものが値上がりし、上がらない、上がってもわずか。そんな私たちの給料で、物価上昇に追いつくどころか置いてきぼりにされています。職場でじっと我慢して、黙っていたら、生活が厳しくなる一方です。みんなで声を上げ、大幅賃上げ・要求実現をもとめて一緒にがんばりましょう。
民間も公務も職場には要求があふれている
北海道高教組 尾張 聡 さん
春闘での賃上げは、大企業のトップと労働界のトップの交渉だけで決まるものではありません。多くの労働者、国民の声とたたかいが基本です。
私たち公務員の賃金は、春闘の結果を人事院勧告に反映させることになっています。
先日、人事院北海道事務局にも春闘要請を行いました。人事院は「賃上げは重要」と言いますが、「民間準拠」「情勢適用の原則」を繰り返します。
民間も公務も、働く現場には「どうにかしてくれ」という要求が満ちあふれています。2つの例をお話しします。
ひとつは、全国一規模の大きい公立通信制高校である有朋高校通信制に、常勤の養護教諭が配置されていないという問題です。先日、道の教育長に要請書を提出しました。
もうひとつは、道立学校の普通教室にはエアコンがまったく設置されていない。昨年夏の猛暑で、高校生からも「教室にエアコンを」という声があがりました。今年の夏までに、とりあえず簡易型の冷房が設置されることになりました。
そのことは、現場から声があがった成果と言えますが、いま、学校には続々と簡易型エアコンの機材が届いていますが、「据え付けは、学校でやってください」というのが、道教委の姿勢です。
授業をしながら、部活をしながら、いったいいつエアコンの設置業務をやれというのでしょうか?無責任きわまりない姿勢です。黙っていては声は届きません。働く現場からはじめる春闘にして、民間も公務も力を合わせたいと思います。
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